ソニーが提供する新しい立体音楽体験、360 Reality Audio。
最近は聴くだけでなく、作ることもできるようになったのをご存知でしょうか?
この記事の目次
360 Reality Audio Creative Suite の登場
360 Reality Audio作成に使うソフトがこの「360 Reality Audio Creative Suite」です。
このソフトはDAW(音楽作成ソフト)にインストールして使うことができ、ヘッドホン一つで全天球(360度)に各トラック音を配置し動かすことで、没入感のある立体的な音楽を制作できるようです。
ただし、現在動作保証が確認されているのは「Pro Tools」と「Ableton Live」のみのようです。
詳しい情報は以下URLを参照して下さい
360 Reality Audio 認定モデルとは?
360 Reality Audio には、ソニーがその音質を認める「認定モデル」というものが存在します。
詳しくは以下をご覧下さい。
今回はMDR-CD900ST、IER-M7、IER-M9、IER-Z1Rの4モデルを比較していきますが、MDR-CD900STのみ360RA非認定モデルです。ただしこの認定制度はあくまで「認定モデルで聴くとより明確に体験ができる」というだけで、非認定モデルの MDR-CD900ST でも 360 Reality Audio は聴けちゃうんですね。
ここで疑問が一つ生まれました。
「360 Reality Audio 音源を最も忠実にモニターできるヘッドホンはどれなのか?」
今回比較する4モデルをご紹介
MDR-CD900ST \19,800(税込)
数多くのレコーディングで使用されていて、最も一般的なモニターヘッドホン。
IER-M7 \82,368(税込)
IER-M9 ¥142,868(税込)
IER-Z1R \219,868(税込)
音質・モニター性能を比較【Hi-Res音源】
まずは、ハイレゾ音源で音質とモニター性能を比較してみましょう。
今回使用した曲は Flamingo/米津玄師 Blue Train/John Coltrane の2曲です。
【比較表】
【レビュー】
MDR-CD900ST
最も一般的に使われているモニターヘッドホンというだけあって、音質と音量バランスは均一で素のまま、モニターみを感じました。加工されていない生の音という感じは、この価格帯でもしっかりと感じます。特にクリック音が聴きやすいので、レコーディングに使いやすいんだろうなというのが一番の感想です。
しかしヘッドホンだからかライブに近い迫力音を感じ、ベースとボーカルがバンド内から浮き出て聴こえます。正直私はこの点にモニターバランスの不安さを感じました。後ろで鳴っている鍵盤、コーラスやサポート楽器を一音一音聴き取ることはできなかったので、同音域の構成音が増えてくると混ざって聴こえると感じました。もちろんこれはリスナーの傾聴力にもよるので、ユーザーによって使い勝手は変わると思います!
もう一つの懸念点は遮音性。モニターボリュームを大きくしたりクリック音を大きくしたりするとマイクにその音声が入る可能性があります。ステージ上やドラム演奏など大音量に囲まれた環境でのモニターには向いていないでしょう。
IER-M7
5万円を超える価格帯のモニターイヤホンということもあり、楽器本来のリアルな音質をモニターすることができました。ここまでくると楽器が鳴るときの「金属が震える振動音」を感じ取ることができますね…!
このモニターイヤホンの特徴は優しい音。音の立ち上がりと切れ目は後述のM9に比べると甘いので早いパッセージのモニター力は劣りますが、残響の温かさと音場の生々しさは優れています。テンポの遅いしっとりとした曲やアンサンブル・コーラスに向いていて、演奏者の表現は他モデルに比べてリアルに伝わります。
IER-M9
ザ・モニターイヤホンと評するにふさわしいのがこのIER-M9。
パキっとした音質で硬くグルーヴ感溢れる音がします。音の立ち上がりから終わりまで遅れることなく忠実に再現されていて、振動感溢れる音は「リアル」という言葉では足りないほど感動を与えてくれます。
音の大小はもちろん、位置や距離感まで正確にモニターできます。M7よりもさらに細かく分析された音が届く感覚で、細かなニュアンスも逃さず聴きとることができます!
個人的にはノリの良さが特徴的だと感じていて、ステージモニターとして使う際に演奏者のテンションを上げてくれるモデルだと感じました。これで音声をモニターしながらライブで演奏できたら、気分は爆上がりでしょうね...!
IER-Z1R
癖なく均一なバランスで鳴らしてくれるのでモニターイヤホン感が強いのですが、最高値モデルというだけあってハーモニーの厚さが段違いでした。また、低音のモニターが行いやすい点も魅力の一つです。ほかに比べて弦の音はより本物に近く相当リアルに聴こえるので、ピッチが聴こえやすく「音を探す」必要がありません!
音のクリアさ、立ち上がりの良さは縦ノリに向いているM9の方が良いと感じましたが、それを上回るオールマイティな性能の高さと圧倒的な音の再現性を持ち合わせたモデルだと言えるでしょう。
音の残響がリアルなのでポップスの臨場感がズバ抜けていて、ステージモニターとしては最適なモデルでしょう!
立体音響技術を比較【360 Reality Audio音源】
360 Reality Audio音源でも比較をしてみました。使用した音源は以下の2曲。
- 好きだ。/Little Glee Monster (YouTube)
- The Steps/ハイム(Amazon Music)
こちらでは「立体的に音を聴く」ことに注目して比較してみました、それがこちら!
ソニーストア価格 | 音響の立体感 | |
CD900ST | 19,800円(税込) | |
IER-M7 | 82,368 円(税込) | |
IER-M9 | 142,868 円(税込) | |
IER-Z1R | 219,868 円(税込) |
上位2モデルと下位2モデルの間に大きく差があり、正直それぞれに細かい違いは感じませんでした。
音の立体感を感じるポイントは「音のクリアさ」です。クリアに聴こえれば聴こえるほど多くの構成音を耳で認識でき、多方向から聴こえる音を感じ取ることができます。その点で上位2モデルは一歩前に出ており、同じ音源でもより立体感を感じました。
結論【最適なモニターヘッドホンの選び方】
以上を踏まえて、360 Reality Audioトラック作成に使うモニターヘッドホンの選び方は3通り!
(Ⅰ)ジャンルと使用楽器で選ぶ
- クラシックのように静かで綺麗な音楽を演奏・モニターするなら IER-M7!
- ジャズ、ファンクのような縦ノリの良い音楽を演奏・モニターするなら IER-M9!
- ポップスを演奏・モニターするなら IER-Z1R!
(Ⅱ)音そのもの or 立体音響で選ぶ
- この選び方は値段準!高いモデルになるにつれて性能が良くなっていくと感じました!
- IER-Z1R → IER-M9 → IER-M7 → MDR-CD900STの順で、価格に合わせて選ぶとよいでしょう!
(Ⅲ)シチュエーションで選ぶ
- 演奏しながらモニターするなら MDR-CD900STがオススメ!
- 静かな環境でモニターするなら 価格に合わせて選ぶとよいでしょう!
- 外出時、騒音が多い環境下なら IER-M9がオススメ!
おわりに
いかがでしたでしょうか!細かいですが音質とモニター性能・360 Reality Audioへの適性を私なりに体験して書いてみました。「意識しなければ分からない」「何となくだけれど確かに違う」と感覚的に感じる差がほとんどだと思いますが、具体的な違いは指摘できずとも違いが存在することだけは明確に感じることでしょう。
私はノリのよい音楽が好きで、ジャズやファンク、ライブミュージックを好んで聴くのでIER-M9のグルーヴ感にドハマりしました!皆さんも好みのジャンルに合わせてモニターヘッドホンのご購入を検討されてはいかがでしょうか。